訪問看護サービスの質を確保するため、人口が少ない過疎地域にある事業者や利用者へ訪問看護を行った場合、加算が算定できます。加算額や条件は異なりますが、医療保険、介護保険どちらにもある加算です。
この記事では、過疎地域などの特定の地域に訪問看護を行った場合の加算について解説します。
医療保険の特別地域訪問看護加算とは?
特別地域訪問看護加算は、訪問看護基本療養費もしくは精神科訪問看護基本療養費に要件を満たすことで算定できる加算の一つです。
特別地域訪問看護加算の算定要件は?
人口が少ない過疎地域の訪問看護ステーションが算定可能な加算です。具体的には次のようなケースで算定できます。
■ケースⅠ
- 厚生労働省が定める地域※1(以下、特別地域)に所在する訪問看護ステーションである。
- 特別地域外の利用者宅である。
- 訪問看護ステーションから利用者宅まで片道1時間以上かかる。
■ケースⅡ
- 特別地域外に所在する訪問看護ステーションである。
- 特別地域の利用者宅である。
- 訪問看護ステーションから利用者宅まで片道1時間以上かかる。
要するに、①訪問看護ステーションもしくは利用者宅が特別地域にあり、②片道1時間以上かかる場合に算定できる加算ということです。
特別地域加算の算定額
1回の訪問看護につき、基本療養費の50/100を算定できます。
例えば、看護師が月に10回訪問看護を行った場合、
⇒ 特別地域訪問看護加算 = 基本療養費 × 50/100 × 10回
ということになります。
厚生労働省が定める地域(特別地域)とは?
厚生労働省が定める地域は、次の地域です。
- 離島復興法第2条第1項の規定により、離島復興対策実施地域として指定された離島の地域
- 奄美群島復興開発特別措置法第1に規定する奄美群島の地域
- 山村復興法第7条第1項の規定により復興山村として指定された山村区域
- 小笠原諸島復興開発特別措置法第4条第1項に規定する小笠原諸島の地域
- 沖縄復興特別措置法第3条第3号に規定する離島
- 過疎地域自立促進特別措置法第2条第1項に規定する過疎地域
特別地域加算算定時のポイント
事前に地方厚生(支)局に確認する
特別地域訪問看護加算を算定する訪問看護ステーションは、その所在地又は利用者宅の所在地が、特別地域に該当するか否かを事前に地方厚生(支)局に確認する必要があります。
特別な交通事情による場合はNG
交通事情などの特別の事情により訪問にかかる時間が片道1時間以上となった場合は、算定できません。最も合理的な通常の経路及び方法で片道1時間に上要する場合にしか算定できません。
毎回訪問に要した時間を記録する
移動にかかった時間を証明するため、移動所要時間を訪問看護記録などに記録します。
介護保険の過疎地域に対する訪問看護加算は?
介護保険の訪問看護には、離島や中山間地域にある事業所、利用者に対して、
(1)特別地域訪問看護加算
(2)中山間地域等小規模事業所加算
(3)中山間地域等提供加算
の3つの加算があります。いずれの加算も支給限度額に含まれない加算となります。
特別地域訪問看護加算とは?
特別地域訪問看護加算は、離島等一定の地域に所在する事業所が行う訪問看護についての加算です。サービス費用の15%が特別地域訪問看護加算として設定されています。
中山間地域等小規模事業所加算とは?
中山間地域等小規模事業所加算は、中山間地域にある小規模事業所が行う訪問看護についての加算です。サービス費用の10%が中山間地域等小規模事業所加算として設定されています。
小規模事業所の要件
「①要介護者に対する指定訪問看護」と「②要支援者に対する指定介護予防訪問看護」それぞれについて要件を満たしているか判断します。
①要介護者に対する指定訪問看護が1か月あたり延訪問回数が100回以下であること
②要支援者に対する指定介護予防訪問看護が1か月あたり延訪問回数が5回以下であること
延訪問回数は前年度(3月を除く)の1か月あたりの平均訪問回数になります。平均延訪問回数については、毎月毎に記録し、所定の回数を上回った場合については、直ちに都道府県知事等に届出を行います。
中山間地域等特別提供加算とは?
中山間地域等居住者提供加算は、中山間地域に居住する利用者に対して通常の事業実施地域を超えて訪問看護を行った場合の加算です。サービス費用の5%が中山間地域特別提供加算として設定されています。
特別地域訪問看護加算等の対象となる地域
特別地域訪問看護加算、中山間地域等小規模事業所加算、中山間地域等特別提供加算の対象地域は以下の通りです。
加算の種類 | 対象地域 |
---|---|
(1)特別地域訪問看護加算[15%] | 1.離島復興対策実施地域(離島復興法) 2.奄美群島 3.振興山村(山村復興法で指定する地域) 4.小笠原諸島 5.沖縄復興特別措置法に規定する離島 6.人口密度が希薄・交通が不便等の理由で、サービス確保が著しく困難な地域として厚生労働大臣が定めた地域※1 |
(2)中山間地域等小規模事業所加算[10%] | 特別地域訪問看護加算の対象地域を除いた以下に該当する地域 7.豪雪地帯・特別豪雪地帯(豪雪地帯対策特別措置法) 8.辺地(辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律) 9.半島振興対策実施地域(半島振興法) 10.特定農山村地域(特定農山村法) 11.過疎地域(過疎地域自立促進特別措置法) |
(3)中山間地域特別提供加算[5%] ※2 | 上記1~11(6を除く)の地域 |
※1 人口密度が復興山村指定基準の116人/㎢未満であること、または人口密度が復興山村指定基準に準ずる程度で地理的条件等により交通が不便であること
※2 この加算を算定する利用者については、交通費の支払を受けることはできない。
その他の算定要件
特別地域訪問看護加算等の算定には、対象地域であることの他に以下を満たす必要があります。
- 都道府県知事等に届出を提出する
- 加算を算定することについて利用者に事前に説明し、同意を得る
特別地域訪問看護加算等算定時のポイント
- 月単位で算定する。
- その月のサービス費用の単位数の5~15%を別に算定する。
- (1)特別地域訪問看護加算、(2)中山間地域等の小規模事業所加算の対象地域にある事業所が、(3)中山間地域等提供加算対象となる利用者にサービス提供する場合は、「(1)と(3)」、「(2)と(3)」は同時に算定可能。
特別地域訪問看護加算等の加算対象となる単位数・ならない単位数
加算対象となる単位数
特別地域訪問看護加算等は、サービス費用の5%、10%、15%を加算します。加算の対象となる単位数は、次の通りです。
(1)特別地域訪問看護加算、(2)中山間地域地域等小規模事業所加算
- 基本単位数(准看護師の減算、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問の場合の単位数を含む)
- 夜間早朝・深夜加算
- 複数名訪問加算
- 長時間訪問看護加算
(3)中山間地域等提供加算
上記に加え、
- 特別地域訪問看護加算
- 中山間地域等小規模事業所加算
※(1)と(3)または、(2)と(3)の併算定可能な場合は、(1)または(2)による割増分を含んだ単位数により(3)の加算を行う。
加算対象とならない単位数
加算の対象とならない単位数は、次の通りです。
- 緊急時訪問看護加算
- 特別管理加算
- ターミナルケア加算
- 初回加算
- 退院時共同指導加算
- 看護・介護職員連携強化加算
- 看護体制強化加算
- サービス提供体制強化加算
まとめ
■医療保険の訪問看護
■介護保険の訪問看護
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