訪問看護を利用する場合、1カ所の訪問看護ステーションを利用するのが一般的です。しかし、ご利用者様の状況によっては、複数の訪問看護ステーションが必要な場合もあります。
この記事では、複数の訪問看護ステーションを利用する場合の注意点や加算の算定条件等について解説します。
介護保険の訪問看護で2か所以上の訪問看護ステーションを利用する場合
介護保険の訪問看護の場合、ケアプランに組み込める範囲であれば利用制限はありません。そのため、
- 1日に複数回訪問看護を利用する
- 毎日訪問看護を利用する
- 2か所以上の訪問看護ステーションを利用する
といった訪問看護の利用でも問題ありません。
医療保険の訪問看護で2か所以上の訪問看護ステーションを利用する場合
医療保険の訪問看護の場合、3つの原則があります。
- 1日1回まで
- 週に3回まで
- 1カ所の訪問看護ステーションのみ
そのため、介護保険の認定を受けていない利用者の方が、医療保険で訪問看護を利用する場合、1か所の訪問看護しか利用できません。
しかし、次の条件に当てはまる場合は例外的に2か所以上の訪問看護ステーションの利用が可能です。
2か所の訪問看護ステーションが利用できる場合
- 厚生労働大臣が定める疾病等の者
- 特別管理加算の対象者
- (精神科)特別訪問看護指示書の指示期間中で、週4日以上の訪問看護が計画(訪問看護計画書に明記)されているもの
3カ所の訪問看護ステーションが利用できる場合
- 上記、Ⅰ.Ⅱ.の条件に当てはまり、週7日(つまり毎日)の訪問看護が計画(訪問看護計画書に明記)されているもの
複数の訪問看護ステーション利用する場合の注意点
2か所以上の訪問看護を利用する場合、次の点に注意が必要です。
訪問看護指示書の扱い
2か所以上の訪問看護ステーションが関わる場合は、2か所それぞれが主治医である医師1人から訪問看護指示書の交付を受ける必要があります。
医療機関側の話になりますが、訪問看護指示料は一人に1月1回しか算定できません。2か所に訪問看護指示書を発行して算定する場合、指示期間を2か月間とし交互に毎月指示書を発行する方法があります。
訪問看護ステーション間の連携
1人の利用者に対し、複数の訪問看護ステーションが訪問看護を行う場合は、訪問看護ステーション間と医療機関との間で十分に連携を図る必要があります。具体的には、訪問看護の実施による利用者の目標設定や計画の立案、訪問看護の実施状況及び評価等を共有します。
同一日に2か所の訪問看護ステーションが訪問する場合
医療保険で1日に2か所以上の訪問看護ステーションが訪問看護を行った場合でも、1カ所の訪問看護ステーションしか訪問看護療養費を算定できません。
例外として、2か所の訪問看護ステーションを利用している利用者に対して、A訪問看護ステーションが計画に基づく訪問看護を行ったあと、B訪問看護ステーションが緊急の訪問看護を行った場合、
A訪問看護ステーション:訪問看護基本療養費+訪問看護管理療養費+その他加算
B訪問看護ステーション:緊急訪問看護加算(2,650円)
を算定することになります。夜間・早朝、深夜の時間帯であっても算定できません。
また、B訪問看護ステーションが緊急訪問看護加算を算定するには、緊急訪問看護加算を算定できる要件(24時間対応体制加算の届出を行っているなど)を満たしている必要があります。
複数の事業所が算定できる加算・算定できない加算
上記の同一日に2か所の訪問看護ステーションが訪問する場合でも解説した通り、同一日に2か所の訪問看護ステーションで訪問看護療養費を算定できません。そのため、下記の加算は同一日に算定はできません。
- 夜間・早朝訪問看護加算、深夜訪問看護加算
- 難病等複数回訪問加算
- 複数名訪問看護加算
- 乳幼児加算
- 特別地域訪問看護加算
緊急訪問看護加算は、上記で解説した通りです。
長時間訪問看護加算は、週1回の算定であるため、隔週ごとにそれぞれのステーションが算定するといった方法が可能です。
月1回算定する加算についてですが、下記の加算は1カ所しか算定できません。
- 24時間対応体制加算
- 退院時共同指導加算 ※特別管理加算対象者等の場合は、2回に分けて行えばそれぞれのステーションが1回ずつ算定可能。
- 退院支援指導加算
- 精神科重症患者支援管理連携加算
- 看護・介護職員連携強化加算
- 訪問看護情報提供療養費Ⅰ
- 訪問看護情報提供療養費Ⅱ
- 訪問看護情報提供療養費Ⅲ
下記の加算は、それぞれのステーションで算定が可能です。
- 特別指導加算 ※介護保険では1か所のステーションのみ
- 在宅患者連携指導加算
- 在宅患者緊急時カンファレンス加算
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